2026年の日本一を懸けた決勝は8月13日、松山市の坊っちゃんスタジアムで行われた。史上最多を更新する9度目の頂点を目指す長曽根ストロングス(前年優勝・大阪)と、7年ぶり3度目の大会制覇を目指す多賀少年野球クラブ(滋賀)の一戦は、先制を許しながら試合中盤に追いつき、勝ち越した長曽根に軍配。長曽根は昨年に続き、高円宮賜杯を手にした。
(写真=福地和男、大久保克哉、鈴木秀樹、本文=鈴木秀樹)
※準優勝チームのインサイドストーリーを追ってお届けします



■決勝
◇8月13日◇坊っちゃんスタジアム
[滋賀]9大会連続19回目
多賀少年野球クラブ
200000=2
00210x=3
長曽根ストロングス
[前年優勝・大阪]2年連続19回目
【多】岸本-生川
【長】山瀬、髙見、山瀬-岡林
三塁打/生川(多)
二塁打/安達(多)、山田蒼、岡林(長)
【評】多賀少年野球クラブは初回、二番・村井大翔と三番・生川友翔の連打で一死二、三塁とし、二死後に安達琉斗が右中間に適時二塁打を放ち、2点を先制した。追う長曽根ストロングスは3回、茂友悠人のヒットに続いて内野ゴロ敵失で無死一、二塁に。一死後に一番・吉見憲眞主将の右犠飛で1点を返すと、続く山田蒼が中越え適時二塁打を放ち同点とした。長曽根は続く4回にも四番・岡林優志の左中間二塁打と髙見銀志郎、茂友の連打で1点を勝ち越した。以降はともに追加点を奪えず、最終6回、多賀は生川の三塁打で一死三塁としたが後続が倒れ、長曽根が接戦を制して連覇を果たした。

長曽根は山瀬晴㊤、多賀は岸本來橙㊦の両エースが先発した


多賀は1回表、村井㊤と生川の連打で一死二、三塁とし、安達㊦の適時打で2点を先取した

安達の適時打で2点目のホームに滑り込む生川㊦


長曽根は3回裏、吉見主将の犠飛㊤で茂友がかえり1点を返す㊦


さらに山田蒼の適時二塁打㊤で辻井がかえり同点に㊦。続く4回裏に3対2と勝ち越した

多賀は6回表、一死から生川が右越え三塁打㊦で同点のチャンスも、得点できずに終了

=2年連続9回目
【2026戦いの軌跡】
2回戦〇21対0弓ヶ浜(鳥取)
3回戦〇2対0昭和(北海道北)
準々決〇8対2IBC(熊本)
準決勝〇7対2船橋(東京第1)
決 勝〇3対2多賀(滋賀)

ファインプレーで接戦に終止符
最終6回表、二死三塁。
リードは1点。多賀少年野球クラブの打席には、初回に先制二塁打を放っている安達琉斗。
フルカウントから振り抜いた安達の打球は三遊間へ。抜ければ同点。しかし、この鋭い打球を深い位置で捕球した長曽根ストロングスの遊撃・吉見憲眞主将が即座に一塁に送球し、接戦に終止符を打った。
3度目の連覇、そして9度目の日本一。長曽根が自ら持つ最多優勝記録を、またひとつ伸ばした。
表彰式を見届け、チームのコーチ陣や保護者に胴上げをされた熊田耐樹監督はベンチに戻ると、ディレクターズチェアに腰掛け、深く息をついた。
その目に光るものがある。
「涙も出るよ。わしももう、おじいちゃんやからね」
常勝軍団を率いる61歳の指揮官はそう言って、笑顔に戻った。

よく似たチーム
初回、多賀に2点を先取され、追いかける展開。なかなかきっかけがつかめない中、長曽根は3回のワンチャンスで追いつき、4回に勝ち越した1点を守り抜いた。
初回に浴びた多賀の連打は、いずれもセンター前に抜けるピッチャー返しの打球だった。
熊田監督が振り返る。
「長打攻勢で来ると思ってたけど、意外やったね」
2回表、多賀先頭の4年生・関沢勇吾の放った打球は、見事なセンター返し。しかし、二塁キャンバスの横には長曽根の二塁手・茂友悠人が回り込んでおり、難なくさばいてアウトにした。
「2回からは、セカンドの守備位置を変えたんです」
と熊田監督。
一方の多賀も、状況に応じて細かく守備位置を変えている。
長曽根は2点を追う3回裏に無死一、三塁の好機を得る。ここでは犠飛とタイムリーで2点を挙げて同点に追いついたものの、機動力を駆使した、長曽根らしい仕掛けは見られなかった。
一方の多賀も、最終回に一死三塁としながら、動くことなく2つのアウトを奪われ、ゲームセットとなった。
「他の相手やったら、楽に1点取れる場面。でも、相手をよく知ってるからこそ、動けない。ウチはそんな感じやったし、向こうもそうやったと思うよ」
熊田監督が振り返る。
仕掛けないのではなく、仕掛けられない。一見、淡々とした流れの中に、さまざまな思惑が交錯していた。
百戦錬磨の将が呟いたのは、こんな言葉だった。
「よく似たチームなんやな。鏡写しみたいなもんやと思う」


今大会は1回戦敗退の2017年王者、北海道・東16丁目フリッパーズの姿もスタンドに㊦

今大会出場53チーム中、最多で並ぶ19度目出場のチーム同士による決勝となったのは、ある意味、必然だったのかもしれない。
前日の準決勝で、多賀に敗れた神奈川・南瀬谷ライオンズの渡邉記章監督は戦いを振り返り、いみじくもこんな言葉を口にした。
「野球の質が違いました」
おそらく、長曽根と戦った船橋フェニックスも似たような思いを抱いたのではないか。
3連覇、そして悲願の10度目Vへ
春先から「今年は全国大会は厳しいかもしれない」と言っていた多賀が、今大会で次々と強敵を倒して勝ち上がってきた戦いざまは、指揮官自ら「弱い」と言いながら日本一まで上り詰めた、昨年の長曽根の姿とも重なる。
ストイックに勝利を追い求める長曽根と、「日本一楽しく、日本一強い」野球を掲げる多賀。アプローチは違えど、「野球の質」という点においては、熊田監督の言うように“鏡写し”なのかもしれない。
試合を決めたのは、3回に多賀が記録した、この試合唯一の失策だったのか。あるいは、抜けていれば同点になっていた、最後の遊ゴロを難なくさばいた長曽根・吉見主将のファインプレーだったのか。
おそらくそれらだけではない、いくつもの分岐点がちりばめられた濃密な6イニングを経て決着した、日本の学童野球を代表する2チームによる激闘。
「今年の大会はほんま、レベルが高かったと思います」
熊田監督はそう締めくくった。
昨年の全18本から飛躍的に増え、計32本を数えた本塁打数、昨年大会にはいなかっただろう120km超え速球投手(※2025年は全会場で球速表示なし)の存在といった数字も、その裏付けとはいえるかもしれない。
「学童野球には、いろいろな考えがあると思う。ウチはここで勝つことを一番に考えているけども、勝つことだけが目的じゃないチームもあって、素晴らしい監督もたくさんおるよね。ただ、ここで頂点を目指す、という意味では、自分でいうのもあれやけど、今日はお手本になるような試合ができたんやないかと思うてます」


長曽根の応援席を彩る8枚の優勝ペナントに、新たな1枚が加わる。
次は大目標の10度目、そして大会初となる3連覇に向け、新たな挑戦が始まる。
「後輩たちも強いから、3連覇してくれると思います」
昨年、下級生らしからぬ攻守にわたる活躍で優勝に貢献、今年は頼れるキャプテンとしてチームを頂に導いてみせた吉見主将はそう言い、力強くうなずいた。

-V戦士 喜びの声-
※文頭の数字は背番号
10 吉見憲眞(6年) 去年の優勝もうれしかったけど、今年はキャプテンとして、チームをまとめて優勝できたので、最高にうれしいです。最後の打球は、うまく処理できました。打席では、出たランナーをかえすことを心がけました。後輩たちも強いから、3連覇してくれると思います。これからはもっと飛ばせるバッターになりたい。
0 北原優響(6年) 連覇できてうれしいです。これからもみんなから応援されて、みんなを応援できるような選手になりたいです。バッティングをもっと頑張りたい。
1 山瀬晴(6年) 打つ方はいまいちの試合もあったけど、コースつくこと、ムダなボール投げないことに気をつけて、投げる方はばっちりでした。ただ、今日はフォアボールを出してしまったのでちょっと…。プレッシャーは少し。最後、めっちゃうれしかった。これからは大事なところで三振とってみんなに信頼されるピッチャーになりたいです。
2 辻井恭悟(6年) レフトから見ていて、最後のショートゴロは難しい打球だったけど、憲眞ならアウトにしてくれると思って見ていました。これからは自分ももっと活躍できる選手になりたい。バッティングも守備も、いろんな場面で。
3 山田蒼(6年) 連覇めっちゃうれしいです。3回の打席は絶対に打たないと、と思って打席に入りました。打ててよかった。これからも打率残せて、ホームランも打てるバッターを目指します。
4 茂友悠人(6年) ずっとセカンドを守ってきました。憲眞との二遊間はやりやすい。今日も落ち着いてプレーできました。この大会は打つ方も良かった。これからも内野手でいきたいです。みんなから信頼される選手になりたい。
5 日本松龍(6年) 2連覇うれしい。去年の優勝よりも、今年の方がうれしい。先輩たちのおかげじゃなくて、自分たちでとった結果だから。これからは走攻守、全部できる選手になりたい。内野守備は好きです。
6 山田雄大(6年) 連覇最高です。外野の守備にはこだわりがあって、どんなあたりも簡単にとってやろうと思って守っています。初戦でホームランを打てて、準々決勝も2安打。初戦はスタメンじゃなかったから、絶対にスタメン入りして打ってやると思って。後輩たちは3連覇できるように頑張ってほしい。
7 吉岡望叶(6年) 試合が終わって、みんなでマウンドに駆け寄った時に優勝したんだって実感しました。すごくうれしかった。いつも声を出して、みんなに頼られる存在になりたい。
8 釜池大耀(6年) 先輩たちから受け継いできた「長曽根魂」を出して優勝できました。みんなよく打ったし、守備も良かったと思います。
9 川添瑠希(6年) 次の学年につなげたかったから、2連覇できてよかった。おととい(準々決勝)のホームラン、サク越えはすごく久しぶりだったからうれしかった。守備は微妙だったけど、バッティングは調子良かったです。
11 奥西悠真(6年) 優勝できてよかった。みんなバッティングがすごくて、長打が多くてカッコ良かったです。エラーなかったのが良かった。これからはみんなにやさしく、頼られる選手になりたいです。
12 西村虎汰郎(5年) 来年も全国に出られることが決まってうれしいです。しっかり準備して、初の3連覇を達成したい。まずは5年生大会で頑張ります。打って活躍したいです。
13 橋本遼河(5年) 優勝できてうれしいです。これからバッティングも守備も頑張って、試合で活躍したい。村上宗隆のような選手になりたいです。
14 塩田明生(5年) 最後キャプテンのところにボールが飛んで、ドキドキしながら見ていました。カッコ良かったです。優勝うれしい。来年は人一倍声出して、活躍したいです。
15 髙見銀志郎(5年) (決勝の最終回はファーストを守り)最後のボールを捕ったときはうれしかった。来年もピッチャーで出て、大会制覇したい。ピンチでしっかり抑えられるピッチャーになります。
16 田島悠雅(5年) 来年優勝できれば3連覇で10回目。走攻守、いろんな場面で活躍して、絶対に勝ちたい。5年生は体が大きくて、パワーがある子が多いんです。
17 岡林優志(5年) この大会はずっとキャッチャーだったけど、Bチームではピッチャーもやっていて、来年はピッチャーでも挑戦したい。もっと打てる選手になりたいです。
18 阿世賀悠(5年) 連覇うれしい。4年生の子たちが再来年、大会に来られるように、来年もボクたちが優勝して連覇を伸ばしたいです。
19 黒島蒼空(5年)試合には出られなかったけど、自分がするべきことはできたのでよかったです。もっと鍛えて筋肉をつけて、1日1本、ホームランが打てるバッターになりたい。
20 田中成也(5年)自分は試合に出られなかったけど、先輩たちが良いプレーをしていてカッコ良かった。来年は自分もそうなれるように練習したい。外野なので「あれが捕れるのか」って驚かれるようなプレーがしたいです。
21 堀井一煌(5年)熊本戦で(川添)リュウキ先輩が打ったホームランがカッコ良かった。負けてるときに空気を変えるような一発が打てる選手になりたいです。
22 山本空汰(4年)チームの雰囲気を良くできる選手になりたいです。来年、活躍して再来年も来られるように優勝したいです。
25 平井悠颯(4年) これからまた練習して、来年レギュラーで来て優勝して、再来年も来ます。これからはどこでも守れて、打てる選手になりたい。
99 坂田淳司郎(6年)この大会は出られなかったけど、みんなと優勝できてうれしい。中学ではホームランを打てるバッターになりたいです。アーロン・ジャッジみたいな選手になりたい。
